あの人は静かに僕を見ていた。
蒼白なその顔に、何の表情も浮かべず。
だから、僕も、静かに、あの人を見つめ返した。
銀色のたてがみ、高い鼻梁、薄い唇、そして、僕を射抜くその瞳。

長い長い沈黙の中、僕は、問いかけるしかない。
・・・あなたは悲しいのですか?
合わせ鏡の向こう、あの人は、何も答えない。
ただ、ふっと、その目が笑った。僕のすべてを包み込むように。

浅い眠りの夢から覚めて、僕はただただ、ため息をつく。
僕とあの人が、失ったものはなんだったのだろうね・・・と。

予算委員会という舞台で、あの人は完璧な主役だった。
みじろぎもせず、腕を組み、静かに深く目を閉じるライオン。
疲労でやつれて果ててはいたが、その凄絶な美しさに、僕は息を呑んだ。

まるで、流れ作業のように進む質疑の間、僕は、あの人だけを見つめていた。
・・・質問、返答。また質問、そして返答。
おびただしい言葉の洪水の中、僕は、あの人の言葉の裏の、悲しみを聞き取ろうとした。
だが、手負いのライオンは隙さえ見せず、微笑んでいた。
不敵な微笑、あるいは挑戦的とも言える微笑。
僕に対して?・・・いや、あの人は、すべての敵に微笑み返しているのだろう。
そして、僕は、既に、あの人の敵なのだ。

僕の心は空回りし、もはやあの人の声を聞いてもいなかった。
ただ、僕は叫び続けていた。僕はここにいる。僕はここにいる・・・・と。


悲しかった。あの人はなぜか目をそらし、僕を見ようとさえしなかった。
さわれる程、近くにいながら、あの人は、はるか遠い場所にいるように思えた。
・・・そう、裏切りと言ってもいい。
支えたいと言っておきながら、今になって、あなたを敵と呼んでいる僕。
支離滅裂な僕。ふらふらと揺らぐ僕。あなたが一番嫌いな政治家になってしまった。

僕は、ただ、機械のようにしゃべりながら、あの人の横顔を見つめていた。
その彫刻のような顔は、硬く青ざめ、強く結んだ唇にも殆ど血の気がなかった。
予算委員会の時とは比べ様も無く、深い疲労の色。多分、昨日から眠っていないのだ。
・・・あ、この人は死ぬ覚悟だ。この国の為に・・・・
唐突に、僕はそう確信し、胸が詰まるような痛みを覚えた。
こんなに思っているのに、こんなに焦がれているのに・・・
僕の思いは、ただループして、あの人に届くことは、決して無いのだろう。

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