まきこは総理に会いたかった。
欧州歴訪の旅、やっとローマから帰ると入れ違いに総理はサミットでジェノバに旅立ってしまう。
総理が日本に戻ると自分はハノイに。
会えない日々が続き、会いたい思いが募る。
ヤスクニの問題すら総理に会うための話題にしか思えない。
「総理に会って、直接お目にかかって、目を見て話したい」
記者の質問に、つい心の内が吐露されてしまうのであった。

中国から帰って来た野中は、数日分の新聞を読んでいた。
いずれも純一郎の「歴代四次官更迭」言明に始まる彼と真紀子の衝突、真紀子の反抗、
真紀子が更迭寸前の目にあったことなどが書かれている。
そして結局、人事案については官邸の言うとおりになったこと。
「・・・ふむ」
全記事に目を通した野中は、数秒考えた。
そしておもむろに電話をかける。
「ああ、私だ。・・・新任の外務事務次官の身辺を調べてくれ。
・・・いや、そんなことは考えてないが・・・。
問題があったら困るからな、色々と。・・・では頼むぞ」
そう言った後、電話を切る。野中は再び新聞に目を通しながら、薄笑いを浮かべていた。

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