おたかさんは、どきどきしていた。
「首相専用機は無事ジェノバに到着」
とニュースは報じている。
「大丈夫かしら。異国に行ったあなたは。夏風邪で体調が悪いと言うけど。」
おたかさんは、数年前、政権党だった時代を思い出す。
「うちのじいさまは、恥ずかしいことに入院してしまったのだけど」
もっとも、トミーは、日本食しか受け付けない人だったっけ。
そして、かの国の料理
「もう何でもオリーブオイルとトマトとニンニクなんだから。
あれじゃあ、ニンニク臭くなってしまうわ。」
となりでは、辻本は「萌え−」と謎の言動をしている。
「お願いだから、無事に帰ってきて。もしもあなたに何かあったら」
おたかさんはぞっとする。今回は、ただでさえも逆風が強いのに
「弔い合戦なんてことになったら、それこそあなたの地すべり的勝利になるじゃない。
そしたらうちは、ぽっぽちゃんところに吸収合併?それとも新社会党と合併?
だめよそんなの、絶対。」
どこまでも、おたかさんは、がんこちゃんなのであった。

「総理が戻ってきたのに何で私また外交しなきゃいけないのよ?」
マキコ不満そうにつぶやい
せっかく総理のために買ったネクタイも「おお!!俺にか」とパパがかってに開けちゃうし。
飛行場で見つけた「小泉総理重病説」の雑誌一応秘書に買わせたけど回りの目が気になってまだ読めないし
はやく日本に帰りたいわ・・・

「ありがとう。本当にご苦労だったね、順子さん・・・」
純一郎は心を込めて、電話の主をねぎらった。
(順子さんだなんて・・・総理・・)
川口っち順子は初々しい少女のように頬を染めた。
「貴女は、とても控えめではかなげに見えるが、芯が強いんだね。
感動したよ。貴女のご主人がじつにうらやまし・・・」
その時だった。
純一郎は突然こみ上げてきた吐き気に、思わず口元を押さえた。
「総理?どうかなさいましたか?御気分がお悪いのでは・・・」
「・・・い、いや、なんでもない。大丈夫、大丈夫だよ。」
純一郎はかろうじてその場を取り繕い、受話器を置いた。
(大丈夫なのか、本当に?俺の体は・・・)
全身にじっとりとした汗が滲んでいる。
(負けるわけにはいかない。今ここで負けるわけには・・・)


マキコは女子トイレに入ろうとして、中から聞こえてきた声にドアの前で
立ち止まった。
「いやあ、やっぱ最初の一声はオーソドックスやけど、お帰りなさい!が
ええかなあ!?」
辻元清美だ。彼女の声は、自分ほどではないが良く通る。
「お帰りなさい!総理(はあと)やな、ここのはあと、がポイントや」
マキコは知らず息を殺し、神経をドアの向こうに集中させていた。
「この間は、ほんま据え膳やったんから。わざわざ部屋まで呼んどいてから
に、ほっぺちゅうやなんて……」
「!」
悩ましい独白。
聞き捨てならない言葉に、マキコは思わず怒鳴り込もうとドアノブに手を
かけた。それを、横からふわりと白い手が押しとどめた。
「けほ」
かすかな咳き込み。ティカゲだった。マキコは怒りをはらんだままの強い
目線をティカゲにぶつけた。だがティカゲは全く動じることなくマキコの
まなざしを受け止めた。そして、ゆっくり首を振った。
「ホント、総理はいけずや。うちの気持ち、もて遊んどんのかなあ?」
辻元の雄たけびはまだ続いていた。
「今度、恥かかせたら承知せえへんで。ああ、でも本当にサミットの時の総
理も萌え〜やったわ!」
ころあいを見計らってそっとトイレから離れた二人は、空いた部屋に場所
を移した。SPはドアの外に待機、だ。
「どういうつもりよ!?あそこでとめるなんて」
マキコはドアが閉ざされた途端、ティカゲに食ってかかった。
「あたしは明日、ハノイに行かなきゃならないのよ!今釘刺しとかなかった
らあの女、総理に好き放題粉かけるわ。そしたら、誰が止めるってのよ!」
マキコは必死だった。
あの女は図々しい。そして意外にシャイな自分より直接的なアプローチを平
気で仕掛けるだろう。そうしたら、もしかして総理は……。
「あたくしがいるわ」
怒りと絶望に目がくらみそうなマキコの耳をひび割れた声が打った。
マキコは目の前の同輩を見つめた。
「あんたが?」
「ええ。あなたが外遊中、総理のお身の上はあたくしがお守りする。約束する
わ」ティカゲはうなずいた。
「なんで、そんなこと…」
「当然でしょう。あの女はあたくしたちの共通の敵よ。下品な手段で総理に近
づこうとする…。あんな女、総理にはふさわしくなくてよ」
マキコはおおいに納得した。
「じゃあ、頼んだわ」自然に右手を差し出していた。一瞬とまどって、ティカゲ
はそっと自らの手を重ねた。
「任せて」
「でも、総理のお体の方が心配ね」しっかりと握手を交わした後、マキコはふと
顔を曇らせた。
「大丈夫。その辺もあたくし、晋さんにでも申し上げてみるつもりよ。点滴でも
何でも強引にやってしまえってね」
けほ、とまたティカゲは咳き込んだ。
「ありがとう。でも、あなたも心配よ。声、でなく選挙が。元もこもないんだか
らとにかくあと一週間、がんばるのよ」
その言葉を残し、マキコはハノイへ出立の準備のため慌しく部屋を去った。
落選、の言葉をあえて口にしなかったマキコの心遣いが、ティカゲの疲れた心に
染みていた…。

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