ハンドルを握りなおし、平常心を取り戻す。
自分が大それたことを望んでいるのは分かっていた。
(それでも俺は・・・)
伸晃は大きくハンドルを切り、自宅へ戻る道を離れた。
そしてハンズフリーの携帯電話で、ある番号をダイヤルする。
掛けなれた、しかし最近は滅多に掛けない番号だった。
電話はすぐに目的の人物に取り次がれた。
「私です。」
『……伸晃か?』
彼が今走っているのは、父がいる実家への道だった。
「おや?」
ニュース番組で見かけた低公害車が、都知事宅近くに静かに停車した。
(あれは確か…)
たまたま張り番をしていた記者が、運転席にいる人物を目ざとく見極め、その車に駆け寄る。
「大臣!」
案の定、車から姿を現したのは、政界のホープと称される伸晃だった。
特ダネの予感に気が逸る。
「こんな時間にどうされたんですか?知事から政策に関するアドバイスでも?
もしかして、参院選出馬要請とか!?」
「そんなんじゃありませんよ。」
息せききって質問を浴びせる若い記者に、伸晃は鷹揚に笑ってみせた。
「都議選も終わったし、国会もとりあえず終了した。でもすぐに参院選でしょう?
忙しくなる前に、親父とサシで飲むのもいいんじゃないかと思ってね。」
「あ、そうですか…」
「悪いね。」
あからさまにがっかりした顔を見せる記者の肩を、伸晃は軽く叩いてやる。
「僕も記者の経験があるから、気持ちは分かるけど。」
「いえ、そんな…失礼しました。」
記者は伸晃のために道をあけた。
そして自分に向かって軽く手を振りつつ、父が待つ実家の門へと向かって歩く
若き大臣の背中を見送り、ため息をついた。
「…石原家といっても、普通の親子なんだな。」
彼は気づいていなかった。
インターフォンを押す伸晃の表情が、戦う男のそれになっていたことを。

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