第3章 純一郎の苦悩

 純一郎は、ぽっぽのことが心配だった。あれ以来、ぽっぽを一度も見舞っていない。
公務が忙しいこともあるが、面会がいっさいシャットアウトされ、マスコミはおろか、
実弟の邦夫も会っていないということが、気になっていた。容態のためではなく、
警察の捜査のため、という説明は受けていたのだが……。
 (ぽっぽは大丈夫なのか)
 菅、岡田、佐藤といった民主党の議員は、時々会っているとも言われている。
彼らの秘密主義ぶりが、純一郎は気になっていた。
 (まさか……)
 ふと、恐ろしい予感が胸をよぎる。
 選挙期間中、MOEメモ解読のプロジェクトチームは、「MOE」が民主党の陰謀に
かかわる暗号であるという前提のもとで、その陰謀にぽっぽと枝野議員が関わっているという
結論を出し、それへの報復措置を取るかどうかで、侃侃諤諤の議論を戦わせていたのだ。
 「MOE」の本当の意味が不明確であることも、彼らの危機意識を無駄に高めていた。
 Mが民主党、Oが大橋巨泉だとすると、Eは別の候補なのか。さまざまな意見が出た。
江頭2:50、永六輔、江川卓、吉田栄作、佐藤栄作イタコ降ろしなどなどなど。
決定打が得られないことにイラつき、過激な意見を出す者も現れた。
 いわく、
 ・民主党の陰謀には徹底的に報復すべし。
 ・こちらでも怪文書を作ろう。
 ・2ちゃんねるにぽっぽ叩きスレを立てよう。
 しかし、純一郎はそういった戦術は得策ではないと言って許可しなかった。過剰な
ネガティブキャンペーンはかえって逆効果になり、相手への同情票を集めかねない、というのが
その理由だった。しかしそれは、表向きだ。内心では、ぽっぽが民主党の陰謀に荷担しているとは
まったく思っていなかったのだ。彼は、ぽっぽのひたむきな愛を信じていた。
 しかし、その意見の対立が純一郎とプロジェクトチームの間の溝になっていたことは確かだった。
選挙中は遊説とサミットで不在になることも多く、あまりコミュニケーションが取れていなかった。
 (まさか……誰か血気にはやったやつがいたのか)
 (ぽっぽに会えないのは、そのせいなのでは)
 純一郎は、しかし、すぐに頭を振り、その考えを追い払った。
 (何ということだ)
 (ぽっぽを心配するあまり、自分の部下を疑うとは……)
 自らを恥じる気持ちと、ぽっぽを気遣う気持ちが交錯する。いつの間にか自分が孤立していたのでは
という焦りもあった。しかし煩悶するだけでは答えは得られない。わからないことはわからないままで良い。
しばらくぽっぽのことは忘れていよう……と、彼は自分に言い聞かせた。他に考えなければならないことは
山ほどある。
 (次の選挙では、2ちゃんねるへのスレ立てぐらいは考慮しても良いかもしれない)
 (そういえば、スレって何のことだろう?)
 (……まぁMXTVなら東京ローカルのことだし、たいしたことではないだろう)
 そう、純一郎は2ちゃんねるを見たことがなかったのだ。そして官邸のテレビの2チャンネルは、
東京のローカル放送局であるMXTV(メトロポリタンTV)に設定されていた。

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