「どういうことやの!一体」
詰め寄る辻元に対し、田嶋は言葉が見つからず壁際に追い詰められた。
「答えられん、てことはやっぱ田嶋さんも「萌えー」なんやないの。下手な言い訳して…
見苦しいわ。潔く認めとき。うちとおんなしなんやろ?」
辻元とおんなじ、と認めるのは、田嶋のなけなしのプライドが許さなかった。
あたしは女の味方、正しい戦うフェミニストなんだよ!
フェミニスト…女。
田嶋にとって慣れた言葉。それを頭の中で繰り返すうちにある事柄を思い出した。
「いいがかりをつけるんじゃないよ」
余裕を取り戻した田嶋は落ち着いた口調で辻元に反撃した。
「自分が男どもに媚び売ってるからってあたしまで一緒にするんじゃないよ」
「じゃあ、なんでやねん」
「小沢さんはね、女の敵なんだよ。知らないかい?」
「女の敵?」
思わず、と心惹かれた辻元の様子に田嶋はほくそえんだ。この言葉で反応しなけば、
辻元は社民党議員として失格であろう。
「小沢さんは、女を囲ってるんだよ」
「うわっ!それほんま?」
「許せないだろう?だからそんな奴のストラップなんて、いくら研究のためでも持つわ
けにはいかないのさ」
気分良く言ってのけた田嶋は、しかし辻元が自分を見ていないことに気付いて顔をしかめた。
「どこ見てんだい」ぶつぶつと文句をつけながら辻元の視線を追った田嶋は、だが同じようにその先に目を奪われた。
「田嶋さん、あれ」
こんな偶然もあるものか。
廊下の向うからやってくるのは、今まさに話題となっていた自由党党首、小沢一郎であった。
飛んで火にいる夏の虫。
たちまち小沢は左右を女性議員二人に囲まれた。
「よくもおめおめとあたしたちの前に顔を出せたもんだね!」
「せや!今度の国会でしっかり追及したるからな!」
「いきなり、なんなんですか」
突然怒鳴りつけられて、小沢は目を白黒させた。
「ごまかそうたってそうは行かへん。小沢さん、あんたは女の敵や!」
「そうだよ、絶対あたしたちは許さない、見逃さないからね!!」
政治の世界に身を染めて数十年。おかげで男の怒声・罵声にはかなり耐性のあるオザーワも
このヒステリックなダブル攻撃には根をあげた。
だが、この場からうまく逃げ出す方法も見つからない。
そうこうしているうちに、さらに高まるヒステリックな二重奏のせいで心臓がどきどきしてきた。
繊細な心臓は、これ以上この過超音域に耐えられそうにない。
「…仕方がない」
小沢は切り札を使うことを決断した。
さっと背広の議員バッジに手を伸ばしその裏の隠しボタンを押す。
「くらえ、タッソ爆弾!!」
ぼんっ!という音とともに立ち上った白い煙が、辻元と田嶋の視界を覆い隠した。
「な、げほっ、なんやの〜?ごほっ」「なんなんだい、これは!?」
いわゆる目くらましの要領で、まともに煙を吸い込んだ二人はげほげほと咳き込んだ。
「いっ、一体、これは、げほっ」
辻元が染みる目をこすりつつ無理やりあたりを見回したときには、小沢の姿は当然、影も形も無い。
「小沢さん、逃げたんやな〜!」
それでもへこたれず、腕まくりして小沢を追いかけようとした辻元は、
だがヒールの先にあたるものに気付いて首をかしげた。
足元に溜まっていた煙が晴れていく。
「あんた、一体なにしてるんだい!?」
田嶋が大声をあげた。辻元も、足元に転がるものの正体を知って目を丸くする。
「あいたたた〜」
床にまぐろのように転がっているのは、自由党の達増議員であった。
「ぼくは…ぼくは、小沢先生のために!」
床に拳を叩きつけ、力説する達増。
だが辻元と田嶋の二人が、そんな達増の繰言を聞いてるはずもなかった。
「…こんな爆弾を持ってるやなんて」
「正確には、鉄砲玉って言うんだよ」田嶋が訂正を入れる。
「こんな鉄砲玉を持ってるなんて…恐るべし、や。小沢自由党!」

この後、さらに恐ろしい事実が判明した。
なんと、この煙に巻かれている間に二人はいつの間にか十日以上もの時をワープしていたのである。
「靖国の騒ぎも過ぎてるなんて…詐欺やぁー!!」
辻元が土井に資料として渡された靖国関連ビデオを回しつつ、
純一郎の燕尾服姿を生で観られなかった無念とともに叫べば、田嶋は
「TBSめ!舛添を呼んでおきながら、あたしがいないことに気付かなかったのかい!」
とニュース23に悪態を費やすことに明け暮れていた。

箱根に行く前日。
ここ一連の騒ぎで憔悴した純一郎は、だがふと思いついて福田官房長官に言った。
「今年の夏は大変だったけど、でも、なんだか一番すごい台風は来なかった気がするねえ」
「何をおっしゃるんですか!?これ以上の大変なんて、冗談じゃありませんよ!」
純一郎と同じくらい、いやそれ以上に心労の多かった福田は、総理の軽口に盛大に眉をし
かめた。
「そう?でも、なんでだかそんな感じがしたんだけどなあ」
それは本当に思いつき、だったのだが。
…それが真実であったことを、口にした純一郎も、福田官房長官も知ることはなかった。

そして。
小沢の恐ろしさを身にしみて知った辻元と田嶋は、次期国会で小沢の私生活を持ち出すこと
はなかったという…。

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