管は苛立っていた。
小泉人気の自民党の圧勝とも言える勝利。
党首としてのぽっぽのふがいなさ。
今の現実。
すべてに苛立っていた。
部屋を飛び出し2時間ぽっぽは帰ってこない。
携帯も「電源が入っていないか・・・」感情のこもらない声が返ってくる。
こんな大事な時にどこへ行ったんだ。
あいつが行く所・・・・
・・・・まさか?!・・・・
管は落ち着く為席につき顔を抑える。
部屋には秒針の動く音だけが響き渡る。
なぜアイツなんだ?俺じゃダメのか?お坊ちゃましかだめなのか?
髪をかきむしる。
「イライラする・・・何にだ?誰にだ?」
自分に振り向かない小泉にか?
自分の愛の為全てを犠牲にしようとしているぽっぽにか?
あの二人に同等に並べない自分にか?
一瞬錯乱する。
深く瞼を閉じる。
そして目頭を抑え新しい仮説を口にした。
「自分に振り向かないぽっぽにか・・・・?」

「1人で来たのかい?管といたんだろう?」
「うん…」
「もう終わったの?」
ちょっとばつが悪そうにぽっぽは首をふる。
「ううん」
「じゃあ、なぜ…」
最後までは聞けなかった。
答えはさっき、ぽっぽが自分から言ったではないか。
『アナタノ顔ガミタクナッテ』
それは彼の真実なのだろう。
しかし後に残された者たちの心中を推し量らずにいられない小泉だった。
なんと思われているだろう。
なんと言われているだろう。
「なにか、怒ってるの」
「そうじゃない。そうじゃないが…」
小泉は右腕を伸ばし、彼の髪に触れた。
「君は…無防備すぎる」
「…」
「あんまり心配かけてくれるな」
そう、純一郎は今、真紀子よりも塩川よりも、ぽっぽのことがいちばん心配だった。
「純ちゃん…」
何かが通じたような気がして、小泉を見上げるぽっぽ。
小泉もぽっぽを見つめている。
不意に純一郎の長い指がぽっぽの顔のあたりまで降りてきて、優しく頬をなでた。
慣れない感触にぴくりとぽっぽの肩が揺れた。
でも彼の瞳は相変わらず優しかったので。
ぽっぽは安心し、おずおずと彼の手に自分の指を添わせた。
一瞬だけ触れた指を放し、けげんな顔をするぽっぽ。
ふたたび確かめるように手のひらを重ねる。
「どうした?」
「…手、すごく熱いよ。熱があるんじゃない」
「そのようだな。この歳で走り回るのは辛いよ」
「なんで言ってくれないの。すぐ帰ったのに」
「だからさ」
「え?」
「帰ってほしくなかったんだ」
「えっ?・・・・」
ぽっぽにはそれが精一杯だった。

ただうつむくだけのぽっぽを純一郎は優しく見つめていた。
「ぽっぽ・・」
純一郎の長い指がぽっぽの顎にかかる。その指に何かがつたい、落ちた。
純一郎は少し強くぽっぽの顔を引き上げた。
ぽっぽは泣いていた。
見上げたぽっぽの瞳に映った純一郎は優しく真剣な目をしていた。
そして、少し悲しそうだった。
ぽっぽがはじめて見る純一郎の表情だった。

「まったく君は泣き虫だな」
そう言って笑った純一郎はすでにいつもの純一郎だった。
ぽっぽはなぜかほっとしていた。
「えへへ、ほんとだね」
ぽっぽは涙を拭いながら笑って見せた。
「そうだ純ちゃん。僕、のど飴を持ってきたんだ。」
ぽっぽの手のひらには色とりどりの小袋がのっている。
「いろいろあるな。」純一郎は感心したふうにいった。
「純ちゃんはどんなのが好きなのかよく分からなかったから・・」
買い物かご一杯にのど飴の袋をいれたぽっぽの姿が
純一郎には想像できた。
「うーん迷うな。」
実は純一郎はのど飴はあまり好きではなかったのだが、飴一つ一つを
一生懸命に説明するぽっぽの姿が胸に染みる。
「ぽっぽはどれがすきなの?」
「えっ?僕はこのレモン味のやつだけど?」
純一郎はぽっぽの示した飴を2個取ると一つを自分の口に入れた。
「ぽっぽ、口あけて。」
ぽっぽが言われたとおりに口を開けると純一郎がもう一つの飴をいれた。
ぽっぽの唇に純一郎の指が触れた。
「口移しの方がよかったかな?」
純一郎は笑っていた。
「純ちゃん意地悪!」

その飴は甘酸っぱい味がした。

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