機体は高度を増し、真昼の海は優しい青に霞んでいく。
純一郎も心地よいまどろみに包まれつつあった。
と、そのとき脳裏をかすめたのは、
前夜久々に夕食を共にした息子たちとのやりとりだった。

「ネットの掲示板で、純たん萌えー、ってすごいんだよね」
「も、萌えー? それは民主党の陰謀ではないのか」
「えっ、そんなことも知らないでメルマガ出してるの?」
「なにをいっているんだ」
「オマエモナー」

その一言を、信子がきつくたしなめたのはいうまでもない。

もはや息子たちまで抵抗勢力に巻き込まれてしまったのか。
もっと詳しく話をきいておけばよかった。後悔が焦燥をよぶ。
「飯島君、暗号解読チームはどうなった?」

「けっきょく対決しかないのだろうか」
ぽっぽは「民主党、対決姿勢へ」という見出しが踊る新聞を、脇へ放り投げた。
エールを送ってもつれない、正面から質問に答えようともしない……
もはや自分に残された道は対決しかないのかもしれない。
鳩の丸焼きにされて骨ごと食われてもいい。食われてあの人の血肉になれるのなら……と
そこまで考えてしまったが、まだ気が早すぎる。
強くなりたい。あの人と対等な立場で対峙できるだけの強さがほしい。
ぽっぽの心は千々に乱れ、いつしか彼はメモ用紙に純一郎の似顔絵を描いていた。
そしてその下に一言添えたくなった。
ぽっぽの筆が動いた。
「萌え〜」
それは、詩的ボキャブラリの少ない理系のぽっぽの頭に真っ先に浮かんだフレーズだった。
萌え〜。
末尾が「〜」なのがぽっぽなりのこだわりであった。
(純ちゃん……)
ぽっぽは窓から東京の曇り空を見上げた。
(沖縄は晴れているんだろうか)
ぽっぽの心には梅雨前線が重くのしかかり、ぽっぽのセンスは霧雨のように寒かった。

「搭乗前に解読チームから連絡がありまして、幾つかの可能性が
考えられるとのことでした。また、ある可能性について総理のお耳に入れたいとのことでした」
飯島の言葉に、純一郎は険しい目付きで頷いた。
そして、首相官邸。暗号解読チームは、幾つかの解読案を提示した上で純一郎に告げた。
「『萌えー』のMは民主党のM、0は大橋巨線氏の0、Eはもう一人の目玉候補であったとしましょう。
すると、何故それを辻元議員が総理に知らせようとしたのかが解せません。
総理、民主党の左派グループと社民党の一部議員が結託しようとしている、という可能性があります」
それが何らかの形で、既に野中の耳にも届いていたのではないか、と解読チームは言う。
目をつぶってそれを聴いていた純一郎は、ぽっぽとの死闘が始まるのだと感じ始めていた。
恐るべし民主党。我が息子たちまで取り込んでいる。このままでは済まさない……

homenext

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