「何ですって、奥義国土交通大臣が入院!?」
第一報を聞いたマキコはとがめるように眉をしかめた。
秘書がかしこまってうなづく。
「ふん」
マキコは不機嫌な面持ちのまま、机の上の電話に手を伸ばした。
「馬鹿ね。年寄りなのに、ちゃちゃらしてるからよ!」
慣れた様子で受話器を取り、番号を押す。受話器を耳に当てつつ、なおもしゃべる
のはやめない。
「ったく、これが党首降ろしを逃れるための狂言っていうんなら、マシだけど。こ
の忙しい時に倒れるなんて!年寄りの冷や水もいい加減にして欲しいもんだわ」
マキコの父譲りのだみ声はよく響く。
あいつぐ外務省の不祥事。その上に大臣まで世論に責められてはたまらない。
(大臣!明日は敬老の日だってのに、そんなこと言っちゃ駄目です〜)
舌禍を恐れ、秘書はマキコを制しようとした。
その時、マキコの口調が変わった。
電話の向うに相手が出たのだ。
「あ、わたし、マキコです。…ええ。それで急いでやってもらいたいことがあるの
よ。…そう、急で悪いんだけど」
よどみなくマキコは相手に己の願いを伝える。
「これから、ゴトウ花店と日比谷花壇に電話して、見舞い用の花束を作ってもらっ
て。…そう、お金は事務所から出してちょうだい。え、なんですって?」
電話の向うの言葉に、マキコの顔が厳しくなる。
「予算がない?…うるさいわね。相手は目が肥えてんのよ。とにかく、見栄えの良
い、センスの良いのを作ってもらってちょうだい。…え、どこに送るのかって!?
そんなのどうでも良いでしょ。とにかく頼んだから。……ケチったら、承知しない
わよ」
最後に低い声で威し文句を加えると、マキコは受話器を置いた。
固まっている秘書を省み、眉をひそめ、追い立てるように手を振った。
「ほら、なにしてるのよ!ぼーっとしてるヒマがあるんだったら、さっさと在米邦
人の安否でも調べてらっしゃい」
そうして独りデスクに坐るマキコは、そこでティカゲの入院先を聞きそびれたこと
に気付いて、ご機嫌がさらに悪くなるのだった。

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