その日は日曜日であり、来客も余り多くなかった。
公邸の池の傍にたたずみながら、一人亀に餌をやる純一郎。
平日はいつも他の者にやらせているのだが、たまの休日、
自分でやるのも悪くない。
「相変わらずだな、カメイさんも」
数日前からマスコミに出演しまくっている、その人物。
橋本派に次ぐ抵抗勢力であろうことは、間違いなかった。
そして、彼と激論をかわした者に思いは及ぶ。
「ノブテルもしっかりしてきたもんだな。うかうかしてられんぞ」
純一郎は、微かに笑っていた。そして池の中に餌を放り込む。
『カメイさんは、そう言えば亀を飼うことにも反対していたな』
彼はふと、思い出していた。自分が飼われることになるから、と。
その意図は否定できないものの、そもそもの思いつきは別にある。
鶴は千年、亀は万年といい、古来より長寿の象徴であった。
もしそうであるならば、亀を飼うことでその長寿の一端でも
自分の政権に及ぶのではないか。
また、恐らく自分の退陣後もその亀は生きているだろう。
改革の成果が上がるには、相応の年月がかかる。
物言わぬ亀に、それを見届けて欲しかった。

> 午後1時44分、公邸から官邸へ。同45分、執務室へ。
>「総理、連日お昼に公邸入りしていますが」に「ふっふっふ」。
  ある日の首相動静より

純一郎の不可解な行動は、番記者達の間に様々な憶測を呼んだ。
真昼の一時間、公邸に戻り総理は何をしているのだ?
密談か?
誰かと会っているのか?
考えにくいことではあるが、まさか・・・・情事?
そうだとしたら、相手は誰だ?

が、しかし・・・
事実は意外な所にあった。

「飯島君。」
純一郎は言った。

番記者達が色めき立っている、ちょうどその頃、
二人は並んで公邸の池の淵にしゃがみこんでいた。
「亀って好き?」
「亀好きかって聞かれましてもねー。好きとか嫌いとかあるんスかぁ?」
純一郎は手のひらに一匹の亀を乗せ、しげしげと眺めながら言った。
「君にあげるよ、この亀。俺に全然なつかないんだ。」
「餌あげようと思っても、いつもいないし。それに、睨むんだよ俺のこと。」
純一郎は飯島の手に亀を押しつけると、さっさと屋敷の中に戻ってしまった。
「ちょ、ちょっと〜、困りますよぉ!亀なんかいりませんってばぁ〜」
「まったくもー!自分が飼いたいって言い出したクセに・・・・」
が、飯島は心根の優しい男でもあった。
「しょーがないなぁ、我が殿は。どれどれ・・・うーん。確かに目つきが悪いな、この亀・・・」
思い切り首を伸ばした亀と目が合った、その時だった。
「アギョオゥーッ!!!」
飯島の言葉にならない叫び声が公邸中に轟いた。
亀は飯島の、そう高いとは言えない鼻にがっぷりと噛みついていた。
「●▲■●▲■●▲■●▲■!!!!!!!!!」(注・殿、助けて)
「おや、なんか聞こえるな。なんだろう?」
純一郎は窓越しに庭を見た。
「何やってるんだ?飯島君は。飛んだり跳ねたり、凄いスピードで
走ってるよ・・・。しかし、あの体の割にはフットワークが軽いな・・・
結構、結構・・・運動は大切だな、うん。」
純一郎は満足そうに微笑むと、食後のお茶を美味しそうに啜った。

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