その時、純一郎は公邸を抜け出し、夜の町を散歩していた。
何故か寝付けなかった。
無論、総理大臣である身が、そんなことをすれば危険なのは分かっていたが、
取りあえず一人で外に出たかった。
ある大きな家の外に来たとき、地面に落ちている紙飛行機を拾った。
子供の遊び道具かと思ったが、街灯で何やら紙に書かれていることに気づいた。
開けてみるとぽっぽの字・・・。

「『本当は あなたのもとに 鳩になって飛んでいきたかったのです』か・・・」

そこで初めて、純一郎は自分がぽっぽの家の傍に来ていることに気づいた。
苦笑しつつ紙を四つ折りにして懐に入れ、もう真っ暗な窓を見上げて
一人呟く。
「いつでも飛んでこいよ、ぽっぽ・・・」


「まちがっています」
とはじめて言われた時には、正直いってショックだった。
ぽっぽは「反小泉」と歌いはじめ、あなたのことはもう信じられない、と言った。
それを聞くたびに、彼に目をそらされるたびに、ずきり、と痛むものがある。
何かが流れ出して行く。取り返しのつかない喪失感だけがあった。
純一郎は、この痛みを彼も感じていると思いたかった。
ではぽっぽの真意はどこにあるのだろう?
(信じられないなんて、言うなよ)
(俺こそ、お前がわからなくなりそうだ)
(まちがっているのは俺なのか?一体いつから…)
遊説先、テレビ局、いつでも何をしていても、心の底でよどんだ澱のように気にかかる、それ。
混乱している純一郎にも、わかっていることが一つだけあった。
もしも選挙後のぽっぽが傷付き、党首の座を追われ、羽根を休める場所すらなくしてしまったら。
「俺のところにくればいい。喜んで迎えるから。それまでに」
彼はつぶやき、目を閉じた。
「準備は、しておくから…」
最後は消えそうなほど小さな声でつぶやく。
指を組み、頭を垂れる彼の姿は祈っている人のようにも見えた。
窓辺には白い光がふりそそいでいる。今日も暑い一日になりそうだ。
テレビ出演の予定まで、あと2時間あった。

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