与党圧勝を伝える新聞が散乱する部屋で、彼はぐったりとソファーに身を投げ出して
いた。
目を閉じ、放心していた。
勝利は快感だった。少なくとも、それを手に入れた瞬間だけは。
「勝利の女神に愛された首相」と評する海外のメディアもあった。
そんなものじゃない。戦いはこれから始まる。
彼は自分の立場をよく理解していた。
やらなければならないことが山ほどある。
その前には、つき崩さなければならない、党内の敵。
明日からでも、今からでも、一刻も早く気持ちを切り替えて、新たな思いで次の場所をめざさなければならないのに。

それなのに・・・。

自民党を勝利に導いた総理は、選挙の前も今も変わらず孤独だった。
政治家なら誰もがあこがれるこの上ない身分にのぼりつめた男は、たまらない喪失感
に打ちのめされていた。
総理になれればすべてが手に入ると思っていたわけではない。
しかし、いったい自分は何を手に入れたのだろう?
あるときはすりより、あるときは牙をむき出す、敵か味方かもわからぬような連中ば
かりに囲まれ、本当に大事な存在には背を向けて。
あの日、石原に言った「誰にも頼らない」という言葉は、誰かに頼りたいという思い
の裏返しだった。
人は一人で生きていくことなどできない。
だから誰もが友人や恋人という名のパートナーをさがしてさまよっている。
思い知ったのは、そんな単純なことだった。

床に視線をやると、ぽっぽの窮状を伝える新聞の見出しが目に入る。
ぽっぽが窮地に立たされている。
なのに、自分はこんなところにいる。
巨大な力があるはずの総理の座につきながら、彼を助けることもできない。
どこで間違ってしまったのだろう。
純一郎にはわからなかった。
また仰向けに倒れこんだとき、携帯が鳴った。
「・・・小泉です」
「飯島です」
「君か。・・・どうした?」
「総理、テレビを見てください。すぐに」
「なんだ?」
「いえ、それだけです。では失礼します」
プツン・・・
純一郎がテレビをつけてみると、飛び込んできたのは「ぽっぽが辞任する」というニュースだった。
レポーターにマイクを向けられ、ぽっぽはまっすぐにカメラを見た。
「・・・」
何も言わず、ただじっとカメラを見つめるぽっぽ。
純一郎はぽっぽに見つめられているような思いにとらわれ、覚えず、立ち上がっていた。
わずか1秒もなかった。
しかし、純一郎は感じていた。自分の中に吹き始めた風を。
まだ間に合うのかもしれない。
いや、きっと間に合う。
奪いに行こう。
純一郎は駆け出していた。
渡米前に告げたように、一緒にやるのだ。
そして、もう意地を張ったりはしないのだ。
あわてて追いすがってくるSPに彼は命じた。
「車を用意してくれ」
「総理、どちらまで?」
「決まっている。民主党本部だ」
純一郎の瞳は自信に満ちていた。
           〜ぽっぽ&純一郎純愛編第一部完(案2・純一郎の場合)〜

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