エダノは悩んでいた。首相の似顔絵にぽっぽの筆跡で「萌え〜」と書かれたメモが、今彼の手にある。
これはいったい何なのだろう?
考えていてもラチがあかない。これは本人に聞くよりないだろう。そう考えたエダノは、
党本部でぽっぽと二人になったのを見計らって、ぽっぽにメモを見せた。
ぽっぽの顔色がさっと変わる。
「これ……ぽっぽさんのメモ用紙ですよね? 筆跡も」
「返せ!」
ぽっぽは、ひったくるようにしてメモを奪い取った。
「それ、いったい何なんです?」
「どうして、きみがこれを持ってるんだ!?」
エダノは正直に、鼻をかもうとしてその紙を見つけた時のことを語った。
「何だって!?」
ふだん物腰の穏やかなぽっぽには似合わない、激しい口調でぽっぽは言い、
「き、きみは何てことを……」
と、声を震わせた。
「きみは、床に落ちている紙で鼻をかむのか! しかも、あんな固い紙で」
「たまたまティッシュ持ってなかったんですよ。……ったく、お坊ちゃまなんだから」
「それに、あのメモは……」
きみは純ちゃんの似顔絵に鼻水つけようとしたのかあああぁぁ……っと言いかけたぽっぽであったが、
かろうじて踏みとどまった。
「ぼくのメモを、そんなことに使うなんて……」
「いいじゃないですか。捨てたものは無主物といって、所有権は放棄したものと見なされるのが原則なんです。何に使おうが、無主物先占で拾ったぼくの自由でしょう」
「捨てたんじゃない!」
口角泡を飛ばしあうエダノとぽっぽ。その2人の周囲を、1匹の蛾が飛び回っていた。

そして首相官邸……。
主のいない官邸の一室には、あやしげな器材が置かれ、数名の男女が耳をダンボにして聞き入っていた。
純一郎と飯島が招集した暗号解読プロジェクトチーム、現在は民主党監視チームも兼ねている。
彼らは超小型マイクを搭載したメカ蛾を民主党本部に潜入させ、会話を盗聴しているのである。
−−きみは何てことを……
「これはぽっぽの声ですね」
−−あのメモは……
−−そんなことに……なんて……
「音が途切れてる」
「飛び回ってますからね。不自然にならないよう近づいたり離れたりしているから集音にムラができるんです」
−−ぼくの自由でしょう
「エダノ議員だな」
−−……じゃない!
音が途切れた。
「惜しい……電池切れだ」
「しかし、これでぽっぽ代表とエダノがメモの件に関与していることは、ほぼキマリですね」

蛾がいなくなっても、エダノとぽっぽは、まだ言い争っていた。
「そもそもぼくは、あなたをユッキーと呼ぶのには反対だった」
「なぜだ」
「ぼくもユキオなんです」
「……あ、そういえば」
枝野幸男はさらに、たたみかけるように
「しかも我が党には千葉6区の生方幸夫もいる」
と言った。
「あと、自民党ですが比例区に実川幸夫というのがいますね」
エダノとぽっぽの議論はいつしか本筋をはなれ、名前談義になってしまった。
わけのわからないうちに名前談義が終わり、そもそも発端であったメモの意味をたずねる
のも忘れて退席しようとしたエダノを、ぽっぽが呼び止めた。
「エダノくん、ちょっと待って」
「は?」
ぽっぽはデスクからミニティッシュをいくつか取り出して、エダノに渡した。
「これ、持って行きなさい」
「あ、すいませんねー」
喜んで受け取るエダノ。見ると、消費者金融やツーショットダイアルのティッシュばかりだった。
「池袋でたくさん配ってたよ」
(わりと堅実な面もあるんだな)
エダノはぽっぽの意外な一面を見た思いだった。
しかし、ぽっぽが何のために池袋へ行ったのかは知る由もない。
池袋東口。それは純一郎が都議選のための街頭演説を、最後に行った場所であった。

「あれ?ぽっぽ代表がなんで小泉首相の絵を書いたメモを持っていたのか、聞くのを忘れたぞ!!」
エダノがぽっぽと話した目的を思い出したのは、家で風呂に入っている時だった。
しかし、なぜエダノがそんなことにこだわるのか、今は誰にもわからなかった。本人でさえも。

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