* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
新聞を開くと、朝の匂いと、新しいインクの匂いが鼻を突いた。
僕はいつも、朝刊のまん中あたりから攻める。
そのあたりのページには、料理とか、生活の知恵とか、定年退職した老紳士のふだんの生活とか、とにかく生々しくなくて、ちょっぴり役に立つ記事が詰まっていると思う。
その日も僕はいつものように、適当にまん中あたりを開いた。
なかなかうまそうな、変わりパスタ。飼い猫をなくした老婆の心境。正しいアイロンの掛け方。電車の中での携帯電話マナーについて。
僕は、淹れたてのコーヒーを啜りながら、それらを丹念に読み、これは、と思ったものはハサミでどんどん切り抜いていった。
それが僕のやり方なのだ。
次のページは、見開きで車の広告。なかなか金がかかっていそうだったが、そのデザインはあまり僕の気を引かなかった。
次。
そこで僕ははたと固まってしまった。
それは、ある男のポートレイトだった。
それは、政党の出した白黒の一面広告に違いなかった。
それは…。
だが、僕の知っているどんな広告よりも、それは、強く僕の心を捉えた。
彼の強いまなざしに射すくめられた臆病な猫のように、僕は身動きできなかった。もしかすると、息も止まっていたかもしれない。
「おやおや。」
わざと、どうでもいい声を出してみることで、僕はかろうじて、「彼」の視線から逃れた。
そうして、いつものように丹念にそのページを眺めようとした。
…だめだ。
どうしても、目が合うと、竦んでしまう。
気を取り直して、彼とにらめっこしようと思った。
笑ったら負けだ。
男は、腕まくりをしていて、やはりこっちを見ていた。
ふと、僕に勝機が見えた気がした。
「献血にご協力ください!!」僕は声に出してみた。
すると、どうだろう。男が、堪えきれずに、にやり、と頬を緩ませたじゃないか。気をよくして、僕は、さらに細部までくまなく点検した。そうして、思わず声をあげた。彼のポートレイトの周りには、こんなものがついていたからだ。
「--------------------------------------」
そこで僕はコーヒーを飲み干したあと、手にしたはさみで、彼の周りを丁寧に切り取り、パスタのレシピとともに、スクラップブックに保存することができたのだった。
にらめっこの勝敗は、もちろん引き分け、だ。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?!
自宅で仕事がしたい人必見!
]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]
FC2 | キャッシング 花 | 出会い 無料アクセス解析 | |