官邸に帰り、寝室でボタンを外しているとドアをノックする音が
「誰だ?」聞くと「お客様です」とドアの向こうから飯島の声がする。
誰だろうこんな時間に・・・「通してくれ」純一郎はそう言い外しかけていたボタンを掛け直す。
ノックが数回してドアの開く音がする。
そこに見知った男が立っていた。
「ひさしぶりだな?どうしたんだこんな時間に・・・」
純一郎はさらりと言う
「いえ貴方の顔が見たいと思って・・・」
男は純一郎に歩み寄りはそっと抱きしめた
「貴方と父の関係は知っている・・・でも僕は貴方を忘れる事が出来ない例え一度の過ちでも・・・」
今にも泣き出しそうな声
「何を言っているんだ伸晃・・・」
純一郎そっと伸晃の肩を叩いた

純一郎は、自分の胸の中の見慣れた風景を思った。
荒野の中に、数え切れないほどたくさんの墓標が立っている。
この墓標を、これ以上増やしてはならないと思った。

忘れてほしい・・・

純一郎は伸晃に言った。
思いがけず、声が掠れた。
伸晃は、信じられない、というように頭を左右に振った。
「だけど、貴方はあの時・・・」
伸晃が一歩近づく。
「飯島君!」
純一郎は飯島の名を呼んだ。
「大臣が・・・お帰りになるそうだ」

伸晃は半ば追い出されるように純一郎の部屋を後にした。
「くくくっ」
廊下の陰からわずかな音がした。
「だれだ!」伸晃は声の方に振り向いた。
そこには満面の笑みを浮かべる竹中平蔵がいた。
「貴様っ 聞いていたのかっ」
伸晃に襟をつかまれながらも平蔵は笑ったままだった。
「八つ当たりなら、特殊法人あたりにしていただきたいんですがね。」
「くそっ」伸晃は平蔵を解放した。「どうして貴様がここにいるんだ。」
平蔵はネクタイを整えながら言った。
「わたしと手を組みませんか?」
「手を組むだと・・」
平蔵の突然の申し出に伸晃は言葉を詰まらせた。だがそれは一瞬のことですぐに
不敵な笑みを浮かべ言った。
「言っておくが俺は総理と心中するつもりだ。不信任案なんぞに乗らないぜ。」
平蔵の表情はあの笑顔のままだった。
「抵抗勢力というやつですか。私だって経済学者の端くれです。
最悪の蔵相として教科書に載りたくはありませんね。」
「損得勘定ぐらいできるわけか。」
そう鼻で笑った伸晃の表情は突然凍りついた。
「まさか・・貴様の背後には・・・」
「・・・YKK・・か・・」
平蔵の笑顔は変わらない。
「さて?・・・」

「ま、今の私は経済財政担当大臣です。今後蔵相もとい財相になれる保証も
ありませんし、民間人ですから国会でどうなろうと直接どうこうは出来やしません。
せいぜい仕事に取り組むくらいしかないんです」
と、例の丸っこい童顔で竹中は言った。
「だから同志が欲しい、ただそれだけのことですよ」
「なら今更手を組むも何もないだろう。大げさな」
表面では平然とそう応じた伸晃だったが、さっきの凍りついた
恐怖はまだ取れていない。
「そう言えばそうですね、はははは」
竹中は軽く笑って立ち去った。その背後を見送りつつ
「・・・・・・」
要警戒だな、と伸晃は確信していた。

homenext

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